この間の日曜の事であるが、高校時代からの友人の結婚披露宴に出席してきた。
いままで、「2次会パーティ」なるものに参加したことは何度もあるが、正式の披露宴となるとこれが2度目である。
しかも、新郎兄弟の上と下とで、併せて2回である。
この度は下の方であるが、思えば、妙なめぐり合わせである。
場所は、原宿の路地を入ったところにある、それ専用の店らしい。
北斗七星のような、不思議な部屋の配置となっている。
こういうときには、当然のことながら同窓会のような態を示す。
まず、0次会を呼び掛けた者があり、それに乗り、皆早めに原宿に集まることとなった。
が、肝心の発起人は「遅れる」とかで来ない。
仕方なしに、私が集合場所を決め、まずは半分の3人が集まった。
しかし、集まっただけだ。
なにせ、こんなところの店を私は知らない。
しばらく歩いた渋谷か、表参道ヒルズのはせがわ酒店しか知らぬ。
どうするか決めかねた状態で、ともかくも脚は動かすことにした。
しかし、店は見つからぬ。
なにせ、これから来るもう3人を含めて入れる店を見つけなくてはならないのだ。
時は、15時30分。
日曜の原宿である。
その時の様子は、私と友人Oのやり取りを再現してみることとする。
私「暑い…、喫茶店はまだか…」
O「喫茶店への道を見つけました」
私「??本当?」
O「ええ、この木には見覚えがあります」
私「(なぁる…)進藤特務曹長、それは本当か」
O「はい、間違いありません」
私「しかし、地図の上では…」
O「地図などあてにならん!よし、進藤特務曹長、先頭に立て!」
その内に、もう1人やってきて、この遊びに加わるはずもない女Sと算段して店を決めてしまった。
結局、その間、私とOは、2人でもって八甲田山ごっこに興じていたのみである。
さて、本題の披露宴であるが、料理もなかなかに美味く、酒も飲み放題である。
ここでは、お洒落にシャンパンとワインである。
花嫁は、いかにも幸せに満ち足りた顔をしている。
その後、2次会があったのは言うまでもない。
さて、翌日。
二日酔いに近い状態で仕事をこなし、帰路に就く。
こんな状態にもかかわらず、
「ああ、本物のカクテルが飲みたい…」
と思ってしまった。
酒に限らず、こう思い立つと、私はだめである。
事を果たさぬ限り、いらいらとした時間を過ごしてしまう事になる。
そこで、帰路からは離れるものの、新百合ヶ丘にあるバーへと足を運んだ。
ここは、たまに行くのだが、あるバーテンが私の事を覚えててくれているので、寄るたびに嬉しくなる。
おそらく、初めてそのバーテンに相手をしてもらった時、カクテルを5杯飲んだ上に、「ロンリコ151」という75度もあるラム酒をストレートで飲んでいたからであろう。
我が事ながら、あの日は全く酔わなかったのが不思議である。
そんな訳で、月曜に訪れた時も、
「今日も、だいぶ飲まれるんですかね?」
などと、からかわれてしまった。
「いや、今日は軽く1杯飲んで帰るんで」などと言ったものの、そんな初心はどこへやらである。
この日飲んだものは、ダイキリにギムレットで、実に、湿度の高い不快な日にうってつけのカクテルであった。
それに加えて、季節のものとして出ていたヨモギのリキュールを使ったものを飲んだ。
これが、ほのかなヨモギの香りがあり、甘すぎず、うまい。
ゆったりとカクテルを飲み、うす寒くなった夜の道を帰るのはなんとも言えない心地がする。
今朝方の、重い気分など、どこへやらである。
さて、明けて火曜日。
この日は、松本と飲みに行った。
昨日とは異なり、時代劇にでも出てくるような上がり込みの座敷がある、老夫婦でやっている居酒屋である。
初めて入ったのは、いつだか忘れたが、一発で私は気に行ってしまった。
それと言うのも、落語や時代小説に出てくる店構え、そのものだからである。
寡黙な親父が包丁を振い、愛嬌のある女将が注文を取りに来る。
それに、ここは食い物がうまい上に、勘定が安いときている。
この日は、松本と、1人3合ばかり飲んで、腹いっぱい食べて6000円でお釣りがだいぶ来た。
むろん、どこぞの空ッ穴は、私を拝んでいるだけでどうにもしようがない。
まぁ、いつもの事だ。
だが、これと飲む酒は、毎度、色々と楽しいものがある。
「お連れさんの終電は大丈夫?」
気が付けば、あっという間にそんな時間である。
私が山道を登って帰る事を知っている女将さんは、松本の事のみを心配している。
話し足りないが、仕方があるまい。
名残惜しく、山道を進む。
振り返ると、店もすでに提灯の灯を落としていた。
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