7月5日。
当劇団会長こと、ホチキスの松本と飲んでくる。
大好きな劇団に所属している人物を「松本」などと呼び捨てにするのもあれだが、「さん」などとよそよそしい呼び方も気が引けてしまう。
松本と私の出会いは、もう10年以上前、高校生の時代にまでさかのぼる。
そのあたりの話は長いうえに重複の可能性もあるので、ここでは触れないこととするが、今更、さん付けなど出来ない間柄である。
さて、この日、松本に誘われ久しぶりに寄席に行く。
場所は新宿末廣亭。
香盤は、芸協。
実は、初めて芸協の寄席を見に行った。
なかなか面白い。
やはり、寄席は良いなぁと感じる。
たまには足を運ぶようにしよう。
寄席がはねた後は、並んで歩いて酒場へ殴り込みである。
この二人がそろえば、必然そうなる。
場所は西口、思い出横丁。
貝を網で焼く、なんとかという新しめの店に入る。
二人してホッピーである。
暑い日、ビールの飲めない私はこれと決めている。
ちなみに、私が旨そうに飲む写真は松本の書いているブログにあるので、ホチキスさんの方を覗いてもらいたい。
2軒目は、その名も「朝起ち」という店。
とんでもない店があるものだと思いつつ、外に張り出されているメニューを見ると「カエル」「豚の…」などと、どうもむちゃくちゃなことが書いてある。
どうせ男二人のこと、気に入らなければさっさと出ればいいのだと、引き戸を開けてみる。
中は、8人ばかり腰かけられるカウンターである。
奥にはひっくり返りそうな梯子段。
「2階のお客さんが降りてきちゃうんで、入れ替わりで2階の座敷ならいいよ」
大将と思しき、お兄さんが声をかけてくれる。
「よろしく頼みますよ」と、待つが2階のお客さんとやらが降りてこない。
大将の母親だろうか、小母さんが2階を大声で呼ばるが、どうやら降りてくる気がなくなってしまった模様。
酔っ払えばそんなものだろう。
メニューにある「サメのソテー」とやらを注文。
サメは昔、物の本で「臭くてとても食べられない」などと読んだことがあったが、これは旨い。
カジキマグロを、更にタンパクにした味。
クセがない。
あっという間に食べてしまう。
ハブ酒を飲んでいたが、気になったものを尋ねてみる。
「あの、そこに書いてある『イカリ草酒』というのは何ですかね」
「ユンケルに使われている生薬ですよ」
初めて来た客にもかかわらず、大将の応対は丁寧そのものだ。
「ユンケルねぇ。味は?」
「草…といった処ですかねぇ。草」
大将の言う、草とやらがよくわからなかったが、注文してみる。
一口飲んでよくわかった。
草だ。
なんというか、草原を飲んでいるようなもの。
「うむむ…」
謎の唸り声をあげながら流し込む。
そんなことをしていると、女性客2人が入ってくる。
先ほどから、ちらりちらりと覗いていた2人だ。
さすがにこの店名と、雰囲気ではなかなか入りにくかったのだろうが、意を決して入ってきたようだ。
この2人にも大将は丁寧である。
カウンターの端には水槽に入ったすっぽんがいる。
明日までのお命らしい。
4人前のすっぽん鍋で1万円とのこと。
「たむさん、山本さん、うちら2人…」
松本が算段を始める。
ぜひとも、また来てみたい店である。
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